人と人とのつながり

先日、コンバインの掃除をしていると、高齢夫婦が話しかけに来られた。

数年前、脳梗塞になって耕作ができなくなっていた人の廃耕田となっていた田んぼを、一緒に整備して耕作してくれないかと声をかけてきたおっちゃん夫婦。
その人は、一人暮らしやったけれど、もう施設に入っていて耕作できる状態ではない。弟さんは遠方にいて、耕作するつもりも、誰かに頼んだり後片付けをするつもりでもないと。

田んぼの状態を見に行くと、草は林のように生い茂っていて、土手は崩れていた。草を刈っていくと、土手を直そうと思っていたのか、1つ何十キロもある畦畔ブロックがいくつも田んぼの中に置いてあった。

ギョエ~!!!

私たちが周囲の田んぼをたくさんしている状況でもなかったし、近所の人に頼んだらよいのでは。
こんな田んぼの片づけ、整備、水口の補修、そんなところから開始となるが、そんな余裕ないなぁ。

イグチ君、頼む、ワシも手伝うさかい。
もう、イグチ君しかいんのや。

そのおっちゃんは、
とっても身なりも綺麗で、おっちゃんのしている田んぼは、それはそれはスカッとしている。草も少し伸びるとは刈って、土手が崩れるとスコップで直して。
田植え・稲刈りなど、作業が終わるとすぐに機械を洗って片付けておられる。自宅の周りもスカッとしている。

そんなきっちりした人生の先輩が、私らみたいな若輩者に、頭をさげて、ましてや自分の田んぼでもないのに、地域を守るために頼んでいる。

弟さんも誘って、みんなで直すことにした。

うちはユンボーを持っていき、畦畔ブロックの除去や、穴の開いた土手の修復をした。
おっちゃんと弟さんは、人力で、畦畔ブロックを道路へ出して、廃棄処分をした。
みんなで協力して耕作できる田んぼに戻した。

そして、もう5年ほど、田んぼとして耕作できている。
その時からのつながりで、水の流し方など、その地域でしかわからないことを沢山教えてもらった。

2-3年前、そのおっちゃんの大きな田んぼ何枚かを、奥さんが体調を崩したので規模を縮小していくと、やらせてもらうことになった。

そして、今回、家の裏の小さな田んぼも耕作して欲しいと頼みにこられた。

今までの経緯もあるから、やらせてもらいたのは山々。だけど、
うちは機械が大きく、小さな田んぼや民家の真横の田んぼは、比較的低い位置に電線が通っていたりし、出入りしにくい。
いびつな田んぼは、幅のある大きな機械では、端まで鋤いたり、植えたり、刈ったりできず、機械を止めて人力でしなければならない。
生産性、、、。
それに、家の真裏なのに、おっちゃんのように頻回に草刈りして、きちっと管理なんて、到底できない。

う~ん、厳しいなぁ。
う~ん、難しいなぁ。

何度か断り、
何度か流し、
やんわり逃げてきた。

それでも、何度もおいかけてきてくれ、イグチ君イグチ君と信頼して下さるおっちゃん。

「なるべく、頼むわ。いや、なるべくと違って、絶対!!」
「ほんま、頼むわ~。なるべく頼むわ~、いや、なるべくちごて絶対!!」
『奥さん、OKって言うて~なぁ。お願い。お願いします。』
「できることはするさかいに。動けるうちは草刈ったり、水みたり、なんでも。」

私は、奥さんに腕をつかまれ、懇願された。
お二人の必死さは痛いほど伝わっていた。

やらせてもらいたい気持ちと、
ただでさえマンパワー不足で、もがいているのに、簡単に返事して本末転倒とならないか。
経営全体のことを考えな変えればならない。
一人OKすると、次々と小さな田んぼを依頼されることになるのも経験済み、、、
しばらく時間をまたもらった。

その間も、おっちゃん夫婦は、見かけるとは歩み寄ってくれ、懇願。

本当は息子夫婦にしてもらいたいやろうけど、それが無理なんもわかってるんよな。
動けるうちに一つずつ身の回りを片付けていこうという意志。
誰も触らなくなった田んぼが、どんな姿になって、周囲にどれだけ迷惑をかけるかを知っているおっちゃん。
とっても後先を考えた賢いおっちゃん。

アイファームは愛ある農業がモットー。

生産性は確実に落ちる面積の小さな民家の横の田んぼやけれど、
おっちゃん夫婦の想いを受け止め、来年からやらせてもらうことにしました。

今回のやり取りで、
二つ返事で「やらせてもらいます」と言ってあげれない難しさを痛感した。

もっともっと地道に経験を重ね、マンパワー不足を解消していき、
余裕を持って地域を守っていけるような、
若者が自信をもって働ける場を提供できるような、
組織に成長していきたいと想う。